解離と解離性障害の分類

こちらのページでは解離性障害、特にその中でも解離性同一性障害(多重人格)という病気について医学的側面より説明いたします。

解離性同一性障害(多重人格障害)の症状・要因は多岐に渡り存在しており、更に他の精神疾患も併発している場合も多く、医療従事者たちも手探りで対応しているのが現実です。

解離と解離性障害の分類

まず、解離とは「意識、記憶、同一性、又は環境の知覚といった通常は統合されている機能の破綻」と定義されています。

通常は「意識、記憶、アイデンティティー(同一性)、知覚」というのは本来一つにまとまっているのですが、これらを統合する能力が何かの要因(心的・外的ストレス等)により失われバラバラになった状態を指します。

全ての解離が病気というわけではなく日常的に起こる解離も存在します。

例えば「ショックな出来事があり眩暈を起こし気を失う」「空想にふけり、一時的に現実と区別できなくなる」「テレビなどに夢中になり周囲の状況に気付かない」などがあります。

解離性障害はそれが継続的、もしくは反復的・慢性的に起こる状態となり、日常生活に支障をきたしたり苦痛・苦悩を生じるまで発展した状態を指します。

【解離性健忘】

外傷的ストレス・心的ストレスなどにより、それに関する過去の記憶を一時的または長期的に失う症状。単なる「物忘れ」とは一線を画する状態です。

【解離性遁走】

自分が誰かという感覚が失われ、失踪し全く別の場所で全く別の人間として生活を始めるなどの症状。解離性健忘により全ての記憶(全生活史)を失くしている事が多いです。

【離人症性障害】

自分が自分でない感覚が反復的・継続的に現れます。現実感の喪失、まるで自分自分を外から眺めている感覚が存在します。ここにいるという意識がなくなり、自分の体も自分のものではないかのように感じられます。

【解離性同一性障害(多重人格障害)】

一人の人間の中に明確に区別できる2人以上の人格が存在し、それぞれが独立した性格・思考・記憶(記憶は共有される事がある)を持ち、反復的・あるいは長期間にわたって交代人格が表に現れる症状。解離性障害の中では最も重篤な症状です。(※次項目より詳細を記載致します)

解離性同一性障害(多重人格障害)について

解離性同一性障害(DID)とは

心因的要因・外的要因、原因は様々であるが、ある時を境に自己のアイデンティティ・記憶・意識の統合がうまくいかず、2人以上の人格が個人の中に生じ、反復的・あるいは長期間にわたって交代人格が表に現れる症状です。

それぞれの交代人格は、独立した名前・アイデンティティ(同一性)・自分史・自己イメ-ジをもっています。その性格は様々であり、得意なことや対応できる物事も異なります。それゆえ本人(基本人格)に対する感情も様々となります。

人格交代については心理的ストレスにより無意識に生じる事が多く、交代人格からの声(幻聴)・幻視も存在することもあり、それをトリガーに人格交代することもあります。

また、交代人格が出ている間の本人(基本人格)の記憶は消失している場合が殆どで、それゆえ日常生活に支障をきたす事が多くなります。中には長期にわたって人格交代に気づかずにいる方もいます。

基本的にそれぞれの交代人格は本人(基本人格)が過去に背負いきれなかったトラウマなどを背負っており、基本人格の不安、不信、憎悪その他の負の感情などを何らかの形で引き受けていると考えられています。

解離性同一性障害(DID)の発症要因

過去、特に幼少期に受けた心的外傷(トラウマ)によるものが大多数を占めます。

基本的に人間には苦痛・悲しみ・絶望・ショックなどから守る防御機能としての「解離」を持っています。解離により、「思い出したくない記憶」「受け入れ難い現実」「認めたくない自分の気持ち」を自分とは関係の無いこととして、記憶から切り離したり抑圧することで自己防衛しています。

しかし、肉体的虐待・性的虐待・心理的虐待などを反復して受ける事により、自己防衛機能が限界を超え、心が限界に達すると自己暗示により別人格を形成し、その中に痛み・怒り・悲しみ・恐ろしい記憶を封印しようとすることがあります。その後、切り離した感情や記憶を背負った人格が成長して表に現れるの事となるのです。

  • 連続した肉体的虐待
  • 連続した性的虐待
  • 連続した心理的虐待
  • 育児放棄・養育放棄など親からの愛情の不足
  • 学校、兄弟でのいじめ

上記以外にも様々な発症要因がありますが、本人の自我の弱さ・自己暗示力の強さなども大きく影響しています。

解離性同一性障害の定義

【DSM-IV-TR】

  • 2つ以上の異なる自我同一性または人格状態の存在(その各々は、環境および自己について知覚し、かかわり、思考する比較的持続する独自の様式をもっている)
  • これらの同一性または人格状態の少なくとも2つが反復的に患者の行動を統制する
  • 重要な個人的情報の想起が不可能であり、ふつうの物忘れで説明できないほど強い
  • この障害は、物質(例:アルコール中毒時のブラックアウトまたは混乱した行動)または他の一般身体疾患(例:複雑部分発作)の直接的な生理学的作用によるものではない(注:子供の場合、その症状が、想像上の遊び仲間または他の空想的遊びに由来するものではない)

【ICD-10】

主な症像は、2つ以上の別個の人格が同一個人にはっきりと存在し、そのうち1つだけがある時点で明らかであるというものである。 おのおのは独立した記憶、行動、好みをもった完全な人格である。 それらは病前の単一な人格と著しく対照的なこともある。

基本人格、交代人格について

解離性同一性障害には様々な交代人格が存在しています。交代人格は元々の基本人格より派生しているので、根っこの部分は類似しているといわれています。
女性の場合は平均20の交代人格、男性の場合は平均8の交代人格を持つといわれています。ここでは主要な交代人格について記載いたします。

【基本人格】

解離性同一性障害となる前の基本となる人格。本人本来の人格です。交代人格のベースとなっています。人によっては基本人格が数年間出ていないケースも存在します。

【子供人格】

子供の人格。解離性同一性障害の多くに見られます。幼少期の様々な記憶・感情を背負っている場合が多く、ほとんどの場合は成長はしません。甘えたい時、逃避時などに人格交代する事が多い。

【異性人格】

基本人格が女性の場合は男性の人格となります。基本人格を守る・かばうなどの役目があります。

【迫害者人格】

自分、他人を迫害する人格。過去に自分を迫害してきた人間が投影されている事が多い。

【自殺者人格】

辛い記憶を背負い、自殺をしようとする人格です。

【統括人格】

人格交代を担ったりする。交代人格の中でもリーダー的な人格です。

【記録人格】

交代人格を含めた自分自身に関して殆どの記憶・情報を保持しており、基本人格に対して情報を提供する人格です。

【その他】

交代人格は基本的に不安定な環境で形成された人格であるので

  • 自分を守るために攻撃的になる人格
  • 他人を傷つけたり中傷する人格
  • リストカットなど自傷傾向が強い人格
  • 自殺願望の強い人格
  • 不安が強くパニックを起こしやすい人格
  • 性的に奔放な人格
  • 極端な甘えたがりな人格

さまざまな性質・性格を持つ人格が存在しており、一概に分類は出来ないと思われます。

解離性同一性障害の治療について

現在は心理療法、催眠療法、カウンセリングが主体となります。

最終目標は人格の統合化ですが、複数に分かれた人格の統合は難しく、人格の統合化は行わずに交代人格・現在問題となっている精神的苦痛・精神疾患をコントロールしていくことに主体を置くことが多くなっています。

【治療薬に関して】

解離性同一性障害に有効な治療薬は存在しません。

定型・非定型抗精神病薬やSSRI等の抗鬱剤は逆効果となる場合もあります。それは解離性同一性障害が鬱病・双極性障害・摂食障害・パニック障害など他の様々な精神疾患を併発しているケースが多いからです。

次ページ【憑依による解離性障害・多重人格】の概要

次ページでは神仏の憑依による解離性障害、特に解離性同一性障害(多重人格障害)について記載しております。

病的な解離性同一性障害・多重人格と神仏の憑依による症状の類似点と差異について、その交代人格の特徴を例に挙げて説明しております。

また、憑依による霊感度の上昇、自傷行為との関連性についても記載しております。

【憑依による解離性障害・多重人格】を閲覧する

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